site_review: 2021-12-08 08:16:04.203210 【技術本】Filmmaker's_Eye-映画のシーンに学ぶ構図と撮影術:原則とその破り方

【技術本】Filmmaker's_Eye-映画のシーンに学ぶ構図と撮影術:原則とその破り方

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【技術本】Filmmaker's_Eye-映画のシーンに学ぶ構図と撮影術:原則とその破り方


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初心者からでも映像作品のカメラ、ライティング、構図の意図がわかるようになります。
シーンの構成要素の全てに意味はあるのだと改めて痛感させてくれます。

一般的な観客は、映画のストーリーや俳優の演技に意識を注力しがちかもしれませんが、その自然に没入できる流れを支えてくれている技術を紹介し解説してくれています。(主にカメラ、構図の使い方と、レンズの選択、効果的なライティングの方法など。)
読み進めていくにつれて、登場人物同士のパワーバランスや結束力、対立などの関係性や空間の奥行きや連続性を伝えるのに各々の配置や構図を駆使していたり、意図的に照明を操作して現実と異なる光源効果を自然に導入して観客の視点を誘導していたり、隠喩などを含む小道具を効かせた印象操作のテクニックや、カメラのレンズの選択、ズームやパン、ドリーなどのを組み合わせの視覚効果による感情や心理表現方法などがわかってきます。

更に応用を利かせて、一部の情報を意図的に隠蔽したり、従来のセオリーと異なる場面にとある手法使ったりと、そのショットのストーリーの前後関係の演出が効果的にしっかり構築されていれば、より鮮烈で印象に残るショットを作り上げることが可能であるという、映像表現手法の柔軟性についても見解を述べています。

確かに平坦かつ端的に被写体を撮るより、著者の解説するとおりにシーンの意図を見出し効果的にカメラと光と構図で演出を都度加え、時にはセオリーを覆すことで劇的に観客に伝わる内容が明確になりシーンが雄弁になり説得力と深みが増すのがわかります。

25個のショットを、例えやすく既存の映画のシーンを例に、スタンダードな使い方と、敢えてルールを正しく破った使い方も紹介してくれています。
これを読破することで、今まで何気なく見ていた映像作品(映画、ドラマ、...etc)を見る視点が変わることはほぼ間違いないと思います。
もちろん、本来の読者対象である自分で映像を作りたい勉強したいという人には、とてもわかりやすく入門にうってつけだと思います。

記載概要メモは以下の通りです。
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映画内容の意見は皆様々だったが、印象あるショットの素晴らしさの意見は一致した。
全員の記憶に残る印象的なショットは同じだった。
重要なことは、ストーリーの中で効果的に使われ共感と説得力を持たすことに成功したからこそ成しえたということ。

映画構図の原則に絶対的なものはない。
驚くほど柔軟。適切と判断すれば覆して構わない。
ルールを学べば正しく破る方法もわかる。

フレーム内のオブジェクト人物の配置からカメラアングルまであらゆることに意味がある。
どれを取捨選択し効果を高めるかが問われる。
自分の経験をそこに反映させ多少の尾ひれをつけることで詳細を強調したり追加する。
>意味ある構図を作ること

ハイアングル:映し出されたキャラクターの敗北感、自信の喪失、内面の弱さを表現

効果を得るには、ストーリーの脈絡がこれを支えていなくてはならない。
前後関係でしっかり支える必要がある。

構図を決める
・主役となる要素
・フレーム内に入れるものと除外するもの
・フレーム内の要素を超えてそのショットによって伝えたい内容

脈絡における意図を観客に理解してもらうには一貫して使い続ける必要がある。
同じ構図を他の表現で使わない。

3分割法
フレームの縦横を3等分し分割線の交点のスイートスポットを目安に構図上重要なものを配置する

ヒッチコックの法則
フレーム内のオブジェクトのサイズは、その瞬間においてそのオブジェクトがもつストーリー上の重要度を直接反映すべき

バランスとアンバランス
拮抗状態と、混乱、居心地の悪さ、緊張感

広角レンズ
遠景はz軸によって歪み実際より長く見える
レンズに接近、遠ざかる場合は、実際より速く見える。

望遠レンズ
z軸が圧縮される。空間の平坦化。

被写界深度
焦点のあってる範囲
深い:広い
浅い:ピンポイント

イメージシステム
ストーリーに何層もの意味付けをするために、映画の中で繰り返し使われる映像や構図のこと。
キャラクターの成長
重要な情報を示唆
観客の潜在意識に静かに入り込むような手法で特定の構図、色、映像が繰り返される

1 超クローズアップ
オブジェクトの小さい部位に集中できる
ヒッチコックの法則により重要な意味のあるものとしての期待を持たす
イメージシステムとしても利用
抽象ショットしても利用できる

ルールを破る:
被写体の瞳に人を映り込ます

2 クローズアップ
キャラクターの言動や感情のニュアンスを観客に見せる
ヒッチコックの法則によりオブジェクトの重要性を視覚的に伝える

ルールを破る:
後ろ姿のクローズアップ。あえて手がかり、特徴を故意に隠してみる

3 ミディアムクローズアップ
キャラクターの顔を見せて言動や感情の細かいニュアンスを映す
ボディランゲージも含めることができる
構図の背景の小道具も利用できる

ルールを破る:
起きている事象は敢えてフレームに入れず、人物のクローズアップのみで状況を語る

4 ミディアムショット
一人または複数を腰から上を収めたショット
キャラクターの身振り、構図内での配置で力関係を伝えられる
ツーショット、グループショット、肩越しショットによく使われる
情報量少ないタイトなショットより長めに映す必要あり

ルールを破る:
頭をフレームからクロップしたショット>深い暗示

5 ミディアムロングショット
一人または複数を膝付近から上を収めたショット
>アメリカンショット
キャラクターや視覚要素を同時に収められる
キャラクターの力関係を表すのに最適
表情もいくらかは伝えられる

ルールを破る:
人物からピントを外し敢えて手前のオブジェクトに焦点を合わす

6 ロングショット
キャラクター全身と周辺領域の広い部分を映す
シーンの始まりの状況説明、またはシーンの最後に挿入される
空間とキャラクターとの繋がりを表現

ルールを破る:
混沌とした群衆の中のロングショットの中に重要なファクタを潜ませる

7 超ロングショット
ロケーションの規模、特徴を示す構図
ロケーションそのものを見せる>エスタブリッシングショット

ルールを破る:
三分割法を使わずそこにうまれるアンバランスさと不調和を利用する

8 肩越しショット
会話する同士を映す場合はカメラを180度の原則に従って配置する
シーンの力関係を強く主張
感情的な結びつきを強める

ルールを破る:
肩越しショットのピントを前景に合わせる。

9 エスタブリッシングショット
その後に起きるアクションの舞台をみせるためのもの

ルールを破る:
ロケーションを一部記号化、抽象化して映す

10 主観ショット
キャラクターの目を通して直接見ているかのような演出
感情や心理状態に一体感を持たせる

ルールを破る:
マルコヴィッチの穴で同時に2人の主観性を通す

11 ツーショット
二人の間に明白なつながりがあることを表現
2人を比較対比に利用できる

ルールを破る:
マジックミラーを通してフレーム内に2人を映す

12 グループショット
3人以上のキャラクターを収めたショット
キャラクターと周辺環境との関係性を伝える
メンバー内の不仲、対立を表現
ストーリー内の特別な瞬間を象徴するショットにも利用

ルールを破る:
ミディアムクローズアップでフレームの下半分を大勢の人の顔で埋め尽くす

13 ダッチアングルショット
傾斜ショット
ドラマチックな緊張感、心理的な不安定さ、混乱、狂気や熱狂を表現
多用は禁物、緊張感が薄れる

ルールを破る:
回転ドアにカメラを設置しダッチアングルで撮影

14 象徴ショット
抽象的で複雑な連想性のある概念をその画から伝える力がある
フレーム内の視覚要素間に存在する特別なつながりを明らかにする

ルールを破る:
視覚要素の複雑な配置でなく、単純な構図から象徴ショットを構築する

15 抽象ショット
2001年宇宙の旅のスターゲートのシークエンスのようなもの
イメージシステムとして使うと効果的

ルールを破る:
地下鉄のトンネルをフレームレートを落として撮影

16 マクロショット
非常に近い距離からの撮影
イメージシステムとして重要な抽象ショットに最適

ルールを破る:
マクロショットのスローモーション

17 ズームショット
それまで見えていなかったものを含めたり、除外したりして注目を集めたりする

ルールを破る:
ズームすると画素が荒くなる

18 パンショット
被写体の移動を追う

ルールを破る:
同一シーン内での編集をかくすためのスイッシュパン(高速のためブラーができるパン)を使う

19 ティルトショット
カメラを上または下方向に旋回させて撮影
エスタブリッシングショットにも利用

ルールを破る:
ティルトとドリーを合わせたショット

20 ドリーショット
焦点距離は一定のままカメラを物理的に移動させる
構図の遠近感を常に変化させる
不安緊張などを実時間でみせる

ルールを破る:
キャラクターに近づくのでなく、横に移動する

21 ドリーズームショット
カメラが被写体に向かってドリーインするときはレンズがズームアウト
カメラが被写体に向かってドリーアウトするときはレンズがズームイン
不安感を煽るのに利用

ルールを破る:
特別に作ったセットでカメラだけ移動させてドリーズームショットを再現
>麻薬中毒者の視点

22 トラッキングショット
被写体の動きを追うようにカメラを移動させるショット

ルールを破る:
被写体(人物)が一旦フレームアウトして、再びフレームインする

23 ステディカムショット
専用のベストを着用して機動力を高めたカメラで撮影
カメラ奏者の移動によって生じるブレや振動をカメラ下のシンバルシステムで吸収
キャラクターの演技をワンテイクで撮り演技全体の流れを保持する目的で利用
実時間の撮影による緊張感を出せる

ルールを破る:
地面すれすれにカメラを配置

24 クレーンショット
エスタブリッシングショットとして利用
他の種類のカメラの動きと組み合わせることもできる

ルールを破る:
クレーンショットに、ズームアウト、ドリーアウト、ティルトを途切れなく組み込む

25 シークエンスショット
最も複雑で難しい
作り上げた時の見返りも大きい挑戦のしがいのあるショット
カメラの動きとフレーミングを組み合わせた長回しのショット

ルールを破る:
91分のワンショットのステディカムシークエンスショット

以上。


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