【技術本】マスターショット100低予算映画を大作に変える撮影術
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【技術本】マスターショット100低予算映画を大作に変える撮影術
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内容は、映像作品のショットを最大限に魅力的にするための効果的なカメラワーク、ライティングなどを様々な各シーンを想定し状況ごとに解説した著作。
映像撮影技術に関する基本的な用語、概念などをある程度習得している前提で解説されている。
初心者の方は、別書「 Filmmaker's Eye -映画のシーンに学ぶ構図と撮影術:原則とその破り方-」から読み始めたほうが理解度が飛躍的にあがるかもしれない。こちらは映像に関する基本概念、用語などの導入から紹介しており、カメラ、構図、ライティングなどの解説も含まれるが、基本的に固定構図や決まった構図からの少ないカメラ動作などでの効果の出し方に着目した参考書である。
本書でも、カメラワークや構図、ライティング、細かい演者への指示など、ショットを効果的に機能するための著者の経験則によるノウハウが詰まっているが、やや前述の著書より段取りも多く複雑で難度が高いものも含まれていると感じた。
しかし、撮影現場でより効果を生む演出のために理由付けされた指示動作がキチンと解説されているので、あらためて現場監督の役割、仕事内容や位置づけ、監督の構想や想像性を発揮するための分け入るべきポイントが明確になって、非常に興味深く読むことが出来た。
レンズの広角、標準、望遠などの種類、構図による注視先の誘導、照明の当て方、ショット中の演者の動きやカメラのパン、ズーム、ドリーの動作、全て画面内に映るものに意図があり、効果を発揮するためにはそれらを無駄なく駆使する必要があることを痛感させてくれる。
著者の現場での経験則を踏まえた肉声も素晴らしく、より効果を発揮するためのシーンでの立地や間取りを踏まえた演者の立ち位置からショット中の動きも如何に計算しているかがわかる。撮影の下準備段階から全体を俯瞰し、必要な要素、段取りを具体的に提示し、最高のショットの模範例を示してくれている。高価な機材を使わずにも撮影できる具体例が満載で、まさに著書の表題どおりだと感じた。
監督は、如何に演者の能力を引き出し、ストーリーを反映させた独自の撮影方法を見出し、存分にクリエイティブ性を発揮するかが問われている事を知らしめてくれる。例え構想に時間を掛けられても撮影現場では常に時間に追われて目まぐるしい。ショットを押さえる中で技術的問題が発生した時や、いざ現場に立つとミス無く無難にこなそうとしてしまう自信のなさの解決策として、撮影技術の引き出しとして本書が勇気ある決断となる選択肢の一つになるのではないだろうか。
そして標準的なフィルムメーカーで終わらず、常に新たな方法もを模索し独自の撮影法を習得するまで昇華して欲しいと著者は語っている。
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