site_review: 2021-12-10 04:36:43.711204 【技術本】FINAL_FANTASY_XVの人工知能

【技術本】FINAL_FANTASY_XVの人工知能

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【技術本】FINAL_FANTASY_XVの人工知能


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人工知能を活用した近年のAAAゲーム制作の裏側を俯瞰することができる。
本書で語られる人工知能は機械学習ではなく、処理アルゴリズムによるゲームAIの解説に比重がある。しかし、モーションの自動生成や、ログデータの異常検知の判定などには機械学習の適用に着手し始めている模様である。さらに、技術が進めば機械学習による自然言語生成と文脈理解、合成音声による演技が可能になり、イベントの手動作成やテンプレートに捉われない自動生成が可能な未来も見えてくる。
FF15では、カットシーンを除いたほとんどの場所で仲間キャラはゲームAIで制御されているとのこと。他にもモンスター、モブキャラなどにもAIは使われている。
AIで使用される具体的なアルゴリズムは引用程度に留め抽象的に解説しているので、専門的知識がなくても概要は把握できる。それらを踏まえた具体的な大規模ゲームで活用されるAI実装における設計内容は、基本設計書レベルや概念レベルに落とし込んである。コードレベルの記載やアルゴリズムの解説がないと知識欲が満足しない人が居るかもしれない。しかし、それらは引用されている文献を読めばよく、あくまで本書はそれらゲームAIを効率よく生産性高く汎用的に活用するためのフレームワーク設計に着目していると感じた。これらの設計指針や文献を参考に実装に起こすのも、プログラマーとして想像力を掻き立てやりがいもあり、本書はその良い足がかりになると感じた。
ゲーム制作における柔軟かつ汎用性の高いAIシステム構築に興味がある人に価値が出てくる著作だと感じた。
もちろん、ゲームのファンとしてどのようにゲームが作られているか裏側を知りたい人にも満足できる良書だと感じた。

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内容簡易メモ:

■ゲーム人工知能の設計
アルゴリズムごとに得意不得意がある
 ・ビヘイビアベースAI:リアクティブな処理が得意、厳密に状態は管理できない
 ・ステートベースAI:厳密な状態を管理、リアクティブは難しい
これら、複数アルゴリズムを組み合わせ、大きな状態遷移(移動、会話、戦闘など)はステートチャートを用い、各ステートの詳細処理をビヘイビアベースで展開記述できるハイブリッドにした。(各ビヘイビア項目も、ステートチャートに展開できる多重階層構造)
各ビヘイビアの項目は、データ・ドリブン方式を取っていて、実装を変更せずに項目の入れ替え追加削除などでAIの行動を昇順や優先度、分岐などでゲームデザイナーがメンテナンスできるようにGUIツール(UE4のBluePrintツールみたいなもの)で構築している。
各AI設定項目のアセット化や、オーバーライドなども可能で、汎用的なAIから、様々な個性的なAIを派生させる事で生産性とメンテナンス性が考慮されている。

■ゲームAIの種類と相関
・メタAI:全体の管理的ポジション。状況を監視して、各AIに指示を出す
・キャラクターAI:自律的な判断、メンバーと協調
・ナビゲーションAI:地形解析、目的地パス計算。上述の二つのAIをサポート

■ナビゲーションAI
・地形のメッシュから目的地を計算している。
・動く障害物を予測して避けるステアリングも実装

■FF15写真撮影機能の裏側
・イベントやロケーション、モーションのフレーム番号などにスコアを持たせて絶好な撮影タイミングを計算できるようにしている。
・写真のタグ付で多様性を判別できるようにして似たような写真が選別されないようにする設計などが紹介されている。などなど。

■バックエンドの行動ログ解析システムで、AI実装内容の可視化とデバッグ活用
・会話や呼び出されているメソッドなどのcall状況をグラフで可視化し、分布状況をデバッグできる。必要以上に不自然に繰り返されている会話がないかなどをチェックできる。
・AIキャラクターが歩けた場所などを可視化して、マップデザインのバグがある場所も可視化など。

■未来のAIを活用したゲーム制作
・AIにプレイさせてバグを見つける
・理想的には、毎回プレイするごとに新しい変化が起こり続けるゲーム
・現状でのAIの課題:自然言語処理が不十分、合成音声は演技はまだ無理、AIが文脈をまだ理解できない

以上。


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